2010年6月6日日曜日

女の子たちと、分かちあえなかったこと。

今、彼女たちがなにしてるのか、僕は知りません。特に連絡をあらためてとってみようとまでは思っていません。連絡先は携帯とともに水没しちゃったし。でも会うことがあったらいろいろと話してみたいな、と思います。

高校三年生の春、僕は東京に行くことを決めました。

当時僕が通っていたのは、地方の進学校。その地域ではスパルタと呼ばれる、規律の厳しい学校でした。……いや、規律なんてものはありませんでした。校則にはただ「ふさわしい服装」といったような一文があるだけでした。スカート丈も、髪の長さも、髪の色も定められていません。ただ、ほとんどの生徒が自発的に模範的な服装をしていました。いまおもえば、なんだかとても、変わった学校でした。

週に三日、朝テストがあり、各授業でもさらに小テストが行われる、テストづくしの高校でした。僕たちの多くは、今思えばたぶんそのテストが好きでした。数字で競争するのは、実はみんな案外好きなんじゃないかなと思うのです。

先生はとても指導熱心で、職員室は常に稼働していました。休み時間にはみな次の時間のテストの次週に明け暮れ、人によっては自主勉強会、自主テストを行ったりしていました。

そんなふうに話すと、息が詰まるピリピリとした雰囲気を想像されると思うのですが、決してそんなことはありませんでした。クラスはみなとても仲がよく、特に受験が近づくほどクラスは団結していきました。先生は生徒たちに受験とは団体戦であるという指導をしていました。僕たちはクラスの中で勉強のノウハウをシェアしあっていました。いま思えば、この受験は本当に楽しい思い出です。合宿もしたし、正月も学校で年越しをしました。

ところでその団体戦の受験なのですが、実を言うと僕は若干仲間はずれコースなところがありました。

僕はどうしても東京に行きたかったのです。でも東大は無理だと判じて、早稲田を目指したのです。僕たちのクラスは地方の国立大志望者が大半でした。まあ、仲間はずれとはいっても、別に仲は悪くなかったんですけどね。けれど、なんとなく、国立大志望者と私立大志望者のあいだには、違う空気がありました。

東京の私立大を目指す、というのは少数でした。けれど僕のクラスには、僕の他にふたりの志望者がいました。両方とも女の子です。彼女たちと仲が良くなったのは僕が勉強に本腰を入れるようになった3年になってからでした。それまでは、むしろ僕は彼女たちのことが本当に苦手でした。

ふたりはとても仲が良くて、ほとんどいつも一緒に行動をしていました。そしてふたりでヒソヒソと話をしては、クスクスとよく笑うのです。僕は彼女たちと何度か視線を交わした後にそうやってクスクスと笑われるので、よく話すようになるまでは、てっきり嫌われているのだと思っていました。よく会話をするようになってからは、理解できました。それは彼女たちの単なる習性というか、そういうものなんだということが。

僕たちに共通していたのは、東京へのあこがれでした。もうこんな田舎は出たい。そして東京に行きたい。東京に住みたい。東京の地図をみて、どのあたりに住みたいかという話をしたのを覚えています。その頃の僕には地理がまるでわかりませんでした。「八王子って名前がかっこいい」なんて言って。遠すぎだっつうの。

僕が東京を目指した理由は、すごくすごく浅はかだけど、でも結構マジでした。なりたい職業があったんだけど、そのことを話すとまた長くなるのでその話はおいといて。で、どうにか東京で成りあがったら、ニノに会うんだって本気で思っていました。いや、今だってめちゃくちゃ会いたいんですがね。あ、でも東京に来て、コンサートは見に行きました。

ニノ。二宮くんね。嵐の、二宮和也。

彼女たち二人と、あともうふたり、私大を目指していた女の子がいました。その女の子たちとは、国立大志望者とは別で、仲が良くて一緒によく勉強していました。みんな一生懸命勉強してて、お互いに協力しあって。あの頃本当にスゴク楽しかったと、今になってふと思いだします。受験が終わった後、みんな合格して、受験勉強は実は相当楽しかったよね、と笑いあったのを覚えています。

けれど、あのころ僕は二宮くんへのあこがれを話すことはありませんでした。東京を目指してた二人にも、そしてあと二人にも。今だったら素直に話せるんだけれど。あのときに後悔があるとすれば、たぶんそのことだけです。

女の子になれたらいいのに、みたいなことを思ったことは僕には少なからずありました。それは性同一性障害のような感情とは違いました。ただ、それだったらもっと素直になれるのに、と思っていたのです。

仲は良かったけれど、彼女たちは女子で、僕は男子でした。本当は本当は、同じように男の子が好きだったのに、そこの部分で一緒なんだということは言えませんでした。仲は良かったけれど、僕たちと彼女たちは「違う」ことになっていました。

当時気になっていた男子がいました。Aくん。(頭文字はAじゃないんだけど。本名で書いているだけに特定されると嫌なので)

恋がかなうわけはないと当時思っていたので、好きというよりもあこがれだったと思います。その仲良しの女の子のひとりが、実はそのAくんが好きだとこっそり打ち明けてきたときのこと。

「ああ、超かっこいいよね~♥」

なんて今なら言えるはずの言葉が言えませんでした。ごくりとその言葉を飲み込んで、僕はなんて返したのだったか。思い出せないけれど、あのときの僕の言葉は、こうやってたまに上滑りしていたのでした。