2010年7月9日金曜日

あした、僕が、嫌いなはずの抹茶ラテを朝イチで飲みにいく理由。

食べ物も、飲み物も、僕の好き嫌いは多くありません。そんな僕の数少ない苦手なものがあります。抹茶をつかったラテやスイーツです。抹茶そのものは好きなのです。ただ、抹茶にクリームを加えたり、ミルクを加えたりした加工品が苦手なのです。抹茶アイスも苦手です。

僕はよくゲイ友達とファミレスでお茶をします。ファミレスのスイーツって、定番商品とフェア商品を組んでいることが多いですよね。そんなときに、抹茶のスイーツのフェアが組まれていると、がっかりしてしまいます。いまも実はデニーズにいるのですが、ちょうど和スイーツ特集です。

僕は食べたり飲んだりすることが大好きです。ただ、残念ながら、舌に自信はありません。いわゆる味音痴。それに気づいたのは、ある日の夕飯のテーブルでした。母の料理のちょっとした隠し味に、父と弟が気づきました。僕だけが気づけませんでした。そのとき、父か弟か覚えていないのですが、「まさひろは味音痴だ」と言ったのです。ああ、僕は味音痴なのだ。そのときに僕は自覚しました。

味音痴は、僕のコンプレックスのひとつです。けれど、たいていのものは美味しく食べることが出来ます。実はゲテモノといわれているようなものでも、わりと平気で食べます。東京には変わったお店があったりするもので、サソリやすずめも食べました。ハチとか、イナゴとか、カエルとかも。ぜんぶ美味しく食べました。僕はもともとあんまり好き嫌いが少ないのです。そして、それはとても幸せなことだと前向きに考えています。

どうしてそんな好き嫌いやら抹茶やらについての話をいきなりはじめたのか。それは明日、とあるお店に抹茶ラテを飲みに行ってみよう、と考えたからです。東京には2店舗を出店しているその店の名前は「KOOTS GREEN TEA」といいます。東京2店舗の場所は、麻布十番と東京ミッドタウン。明日は麻布十番のお店をたずねてみようと思います。日付が変わっているので、厳密には明日ではなく、今日なのですが。

明日は仕事もあるので、行くとしたら朝イチしかありません。しかも、実は今日、うっかり、とある本を電車の中で読みふけった挙句に、終電を逃してしまいました。ファミレスで一晩過ごします。そんな疲れ明けの身体で、なんでわざわざ嫌いな抹茶ラテを飲みにいこうというのか。それは、読みふけってしまったその一冊の本が、原因です。

「すべては一杯のコーヒーから」――。

松田 公太
新潮社
発売日:2005-03

先日僕は、ブログで東京選挙区では松田公太さんに一票を、と書きました。

しかし、正直、先日あの記事を書いたときに、僕は松田公太さん当人について詳しくは知りませんでした。少なくともWikipediaに乗っているような公式のプロフィールや、アジェンダのほかには。もちろんそれだけでも別に構わなかったのですが、せっかくなら本を読んでみよう、と考えました。

この本は、いわば松田公太さんの自伝です。タリーズ・ジャパンを創業し、軌道に乗せていくまでを、彼の少年期から書き起こしたものです。少年期のいじめや、家族との死別。失敗と挑戦を繰り返してきた、その半生が描かれています。

シンプルに読後の感想を言い切ってしまうと、松田公太さんはものすごく熱い人です。情熱があって、決断力があって、強くて格好いい人です。明るくて、さわやかで、男らしい。僕はジェンダーやセクシャリティについての観点から、男らしいという表現があまり好きじゃないのですが、それでも彼にはこの言葉がやっぱり似合ってしまうので使ってしまいました。本人は自伝の中で自分のことを、突撃野郎と言っていますが、まさに言い当てていると思いました。米タリーズの創業社長であるミスター・トムに松田社長がアポイントをとったときの突撃っぷり、そしてその格好良さと言ったらありません。

僕はこの本をものすごく面白く読みました。ただ、正直なところ、この本は誰にでもオススメしたい本というわけではありません。

僕は、あまりに強くあろうとする彼の姿に、あまり共感できませんでした。育ちも違い、性格も違い、強い彼には自分を重ねることはできませんでした。まあ、そもそも共感できるように書かれた本というわけではないのだと思いますが……。

僕はとても弱虫だし、いくじなしだし、そして彼のように自分に厳しく生きることができていません。

つい無駄遣いしてしまうし、つい夜更かししてしまうし、つい……。「つい」が多くて、自分の弱さにほんとにがっかりすることばかりです。

なんというか、今の僕は十分に幸せなのです。友だちとおしゃべりしたり、友だちと一緒にごはんを食べることが本当に幸せです。楽しいのです。だからなのか、強く何かを変えなければいけない、というような強い気持ちをいまひとつ持てていないのだと思います。こう変わったらいいな、こう変えていけたらいいな、そういう思いは確かにあります。けれど、まだここまで、強くなれていません。つい、楽をしてしまう自分がいるのです。別にこのままでもいいかな、と思ってしまう自分がいます。

だから、彼の夢をふくらませる力、彼の目標を達成し成し遂げる力。僕は本書を読みながら、人間にはこんな力強さがあるのだと、ただただ素直に感服するばかりでした。

彼は文庫版の巻末で、人間の弱さについて触れています。そこで彼は書いています。自分はまだまだ弱い人間だと。

以下、引用します。

以前から感じていたことだが、特にここ数年で痛感するようになったのは、人間の弱さである。ダイエットひとつとっても一人でやり遂げることは難しい。また、自分のミスや自分の弱さ、不出来を認められずに、言い訳をしたり、他人のせいにしたりする人がいかに多いことか。この点は私も常に自戒している。(中略)私自身、自分の弱さは十分に自覚しているつもりだ。だからこそ、安易な快楽や贅沢に流されてしまうことが、怖いのである。

これを読んで、僕はとてもフクザツな気持ちになりました。

だって、松田さんは十分に強い。尊敬するほど、強い。なのにそんな強い人が、自分の弱さについて語っているのです……。

いつだったか、一時期、ネット上で「マッチョ」と「ウィンプ」という言葉が流行ったことがありました。簡単な定義をつけると、マッチョは、自分に厳しくあろうとする人。自己責任を前提にして、ものごとを語る人。ウィンプは、他人に厳しくあろうとしたり、自分に甘い小市民のこと。この定義で言えば、松田さんはマッチョです。とてつもなく。

僕はかつて、こういうマッチョに反感を抱いたりしていました。そんなふうに強くなれない人だっているんだ、と。

ていうか、そもそも社会が不平等じゃないか、と。社会が僕たちを苦しめていて、そんななかで僕たちが強くないことを責められると、つらい。僕は確かにすぐ無駄遣いをしてしまうし、僕は確かにだらけてしまうし……。それで生活が苦しかったり、人に迷惑をかけてしまったり嫌われてしまったり、失敗したりして。自分のせいだって自分を責めてしまうのは、つらくてかなしくて、泣きだしてしまうくらいしんどくて。そして、世間や社会のせいにしたりして。確かに「言い訳」なんだけど、それを「言い訳」っていわれることがすごくイヤでした。そのくせ、人のあら探しばかりしていました。

だから、以前の僕は、マッチョな人がほんとうはちょっと、苦手でした。清く正しく凛々しくカッコよく頑張っている人が、実はほんとうはちょっと苦手なのでした。それはたぶん、そんな人に自分の弱さが責められているような気がしていたからです。お前のような弱い人間はキエテシマエ! そんなふうに思われているんじゃないかと、ビクビクしていたから。

そんな以前の僕が、この本を読んだら、つらくてつらくてしかたなかったと思います。こんな風には強くなれない……きっと、凹んでしまったと思います。

すごく面白く読んだし、この本で僕は松田さんのことがすごく好きになりました。ただ、それでも僕が、この本を「誰にでも」とオススメできないのは、そんなふうに弱い自分を責めるつらさを知っているからです。以前の僕のようなメンタリティの人には、この本はきっととんでもなく強い毒だと思います。以前の僕なら、たぶん、こんなふうに一気にこの本を読み終えたりしなかったと思います。

今の僕はどうなのか。

実は、確かにこれを読んで、やっぱりダメな自分のことを責めて、ちょっとつらくなりました。誰かに、自分の弱さを責められているような気がして、ビクビクしたりしました。彼ほどの偉業は成し遂げられなさそうな自分に、凹みました。

ただ……、この本を読んで、少しわくわくしている自分がいました。

このわくわくについては、まだちゃんと説明できません。ただ、心臓がバクバクするような、そんな読後感がありました。いま、その心臓のバクバクが、実は自分の何かを変えてくれるんじゃないか、と感じています。

嫌いなもの、嫌なものについて、もうちょっと向きあってみよう、と考えました。

イヤなもんはイヤ!!!!! って、僕は本当は思っています。たとえば、掃除とか片付けとか大嫌い。運動も息切れするし疲れるしうまくできないし、だいっっ嫌いです。お金の管理も苦手だから心底嫌いです。

でも、もしかしたら好きになれるものも、なかにはあるかもしれない……いまそんなふうに思っています。

実はそれが冒頭の抹茶ラテの話につながるというわけです。

うまく言えないのですが、今の自分に必要なものが、もしかしたらそこに、抹茶ラテの中に見つかるかもしれない。この本を読んで、そんなふうに感じたのでした。

「KOOTS GREEN TEA」は松田さんが、新たに始めたばかりの挑戦です(←間違いでした。追記参照)。緑茶を中心に提供するチェーンで、松田さんはこれを海外に発信しようとしています。僕はこれはきっと成功するビジネスだと思っています。ペットボトル入りの緑茶市場は近年急速に拡大しています。緑茶というのは実は、コストがなかなか安いうえに、そこにお金を払ってでもこだわって美味しい物を、と考える人が多い、そういう市場なのです。海外にも十分に浸透させることが出来る、そういう日本の強い文化だと思うのです。コカ・コーラにもきっと負けない、日本のドリンクです。

KOOTS GREEN TEA

まあ、もしかしたら……やっぱり美味しくない!!! って思うかもしれないけれど。

僕は、あした、抹茶ラテを飲みに行きます。

追記;よく調べてみたら、KOOTSをはじめたのは随分前のことで、そして松田さんはもう社長を退任して、KOOTSのビジネスを任せ、現場から遠ざかってしまったみたいでした。KOOTSはどうなるんだろう。