2010年7月20日火曜日

死者と生者の対立を描けなかった、あるいは描かなかった「東のエデン」。

某ゲイバーを拠点に、その店で知り合った友人たちおよびママと「エヴァ部」なる部活に参加しています。名前の通り、エヴァを見たり語ったりする部活です。というのは半分本当、半分嘘で、その活動はエヴァだけにとどまりません。さて、もう数カ月前の話になるのですが、このメンツと一緒に「東のエデン」の劇場版を鑑賞してきました。

僕はこの「東のエデン」のアニメ版がとても好きで、この劇場版もたいへん楽しみにしておりました。アニメ版でひろげた大ぶろしきを、劇場版で回収できるのか――。しかし、結果は残念。そこかしこに散らばった矛盾点になんの落とし前をつけることもなく、説明不可能なハイパーハッキング行為によって物語は強制終了させられました。

とはいえ、このアニメが非常に面白いアニメだったことには変わりありません。論点がきちんと整理されておらず、明確な対立が正しく提示されなかった(その最たるものは「ニート」の描きかた)のは残念でした。しかし、少なくとも、物語の核に選んだポイントは十分に魅力的でした。

ノブレス・オブリージュ。財産や権力の保持には社会的責任がともなう、という考え方。

では、「財産や権力を保持する人」って誰なんでしょう。

以前取り上げたように、65歳以上の平均貯蓄残高は2423万円。不動産が4251万円。ただしこれは世帯あたりなので、単純に2で割って3337万円。これに100万をかけるとざっと33兆。赤字国債を帳消しにできるほどの額だ。

Spend Now, Pay Later -- Posthumously - 404 Blog Not Found

さて、リンク先のdankogaiのブログにも詳細があるのですが、ここでいう「持てる者」とは高齢者のことだけではありません。確かに高齢者は、財産や権力を保持する層です。

しかし、いえ、むしろ、それ以上にこの国において強大な権力を持つ存在がいます。

それは「死者」です。

東のエデンに登場した「相続税100%法案」。これがすごい。いったいこの法案がいかにして提出され、いかにして国会で論じられる争点となったのか。非常に興味あるところなのですが、アニメではほとんど描かれません。この法案は、死者からの財産剥奪によって、国家を生者のものへと引き戻す衝撃的な法案です。

是非はともかくとして、東のエデンはこの対立を、わざとなのか、誤魔化しました。

裕福な親に守られ、働かなくても生きていける「ニート」の多くは、祖父母あるいは曾祖父母世代の死者からの潤沢な相続を受けることが出来る層です。死者の権力をあてにした、そういう存在、いわば<持てる者>です。

しかし、東のエデンはこの「ニート」たちを、「持たざる若者たち」とほとんど同列に語りました。それどころか、既得権益と戦う代表選手のように扱っていました。

とんでもない。

エヴァ部では劇場版の前編を鑑賞の後に、作中でも登場した豊洲の「東のエデン事務所」を貸切にて、会食&作品の議論を行ないました。当然、その場で「ニートは『持てる者』だろ」というツッコミが入り、僕たちは不満をじゅうぶんに語りました。

しかし、結局、劇場版の後編をしても、作り手たちからその点について結局十分に語られることはありませんでした。

格差問題が語られるとき、多くの議論で抜け落ちている視線があります。おそらく先述のdankogaiブログなどの読者にとっては自明です。それは、強者・弱者にはふたつのベクトルがあること。

ひとつはフロー、ひとつはストック。より分かりやすく言えば「産み、稼ぐ強者/産まず、稼がない弱者」と「持つ強者/持たざる弱者」。

この国の「持つ強者(死者)」は何故こうまで稼ごうとしないのか。

あまり他人の生き方や死に方に不平不満を言いたくはありません。しかし、やはりこれだけの数字を見てしまうと、愚痴くらいはこぼしたくなってしまいます。

貯蓄残高2000万以上……。

多額の奨学金で借金漬けのスタートを切らざるを得ないイチ学生としては、喉から手が出るほど欲しく「その金で俺に商売させろ!」「若年者が負担しなきゃいけない国債をそれで帳消しにしてくれ!」と言いたくなるほどの額であります……。

まあ、相続税100%は、さすがに暴挙だと思ってはいるんですけれどね。