2010年11月11日木曜日

自由化という響きはよいけれど、農業がどうなってもいいと思ってない?

APEC(アジア太平洋経済協力)会議が開催されています。会場は横浜パシフィコ。

地方の警察官たちが大挙して上京しています。要人の警護にあたっているのですね。警備員もナイフ所持で逮捕されたりしたそうです。多くの人の注目が集まっています。


最も注目が集まっているのはTPP(環太平洋連携協定)です。

これに対して、大きく反対の声を上げているのが農林水産業。

貿易の自由化によって大打撃を受けるというのが、反対の大きな理由です。それに対して、自由化によって競争力を養うことが出来るという声があがっています。

僕も農林水産についてはかねてから強い興味があります。

なので、一体何がどうなることでどうなるのか、因果関係と動向を把握しようと、見守っておりました。

自由化に賛成! 実は僕もまず、そう思いました。

自由経済によって、過当な保護を受けていた農業も活性化して、――なんて単純な発想をしました。

でも、本当にそれが「正解」なの? それによって、国は、世の中は、よくなるの?

疑問符から、もういちど考えてみました。

食料自給率の問題、農林水産と政治の問題、農業というものの性質、世代間の問題、国の間の問題、フードマイレージ、食の安全、……関連すると思われることがらについて、あれこれと考えを巡らせてみました。

結論。

いまたしかに、本当ならば、日本もTPPに参加するべきなんだろうと考えています。しかし、それは単純にTPPへの同意ではありません。

日本の農業がいったいどこに向かうべきなのか、僕にはまだ結論が出ません。

考えれば考えるほど、一体、どうすることが誰にとって良好なのか。複雑に絡み合った糸は、ほどけそうにありません。

食のビジネスは、全世界に通じています。食べものの価格の変化は、国の文化を左右します。原理原則でものごとを考えて、結論を出すのは賛成できません。

それはただの無思慮な第三者のノイズでしかない、と感じます。

様々な角度から検案し、良好だと思える一手を打つべきです。それこそが戦略というものだと思うのです。それこそが政治というものだと。

インターネット上の言論を見ていると、農業に対する「苛立ち」が目につきました。

それは過剰に保護された農家へのいらだちだと思います。気持ちは十分に分かるのです。同じ土俵で勝負していないという感覚。

農業に保護が与えられるのは生産性の低さからです。生産性が低いために、所得格差が生じるからだと言われています。

生産性が低い? 本当に生産性が低いのでしょうか?

農業が産み出す「価値」って一体なんなんでしょう?

そもそも「価値」を産み出すことが、日本を、国を、あるいは世界を、よくすることの唯一でしょうか?

日本の農業はどのようにあるべきなのでしょうか。

生産性の高い農業によって、大量の輸出が可能になること? それとも生産性の低い農家なんかは残らず駆逐されてしまえばいい?

日々、口にする食べもの。そこにどれだけの労力がかかり、誰の手が汚されているのか、僕も含めて、みんなまるで把握できていないんじゃないでしょうか。

僕はその原因について、こう考えます。

考える人々が、みんなみんな、農林水産を手放してしまったからだ、と。

日本の農業の担い手の半分以上が65歳以上です。

いまの40歳前後の皆さん。あなたたちがこのビジネスを手放したことが悪いわけではないと思います。手放したわけはなく、参入できなかったのかも。

日本の農業というフィールドは、ビジネスとしてあまりにも泥臭く、あまりにも政治的で、あまりにも利権的で排他的で、あまりにも魅力にかけていたのだと思います。

だから、高齢者だけのものになった。誰も参入しなかった。

ビジネスの手段は限られていました。

そこでビジネスを起こすには、いままであまりにも魅力的でなかったのです。

でも僕は、今はほんの少しだけちがうとおもうのです。

作物の違いについて、インターネットで説明ができる。生産者と直接、消費者がやりとりすることもできる。そこを通じた、体験も生まれる。共有できる。JAや農協との付き合い方も変えることが出来る。

先日紹介し、僕が今も関わりを続けている「麦わら農場」は、そのありかたを変えようとしている農家のひとつです。

とっても味が強いルッコラ。市場で売ってるものの倍くらいスパイシーなの。

APECの動向を見れば分かるように、農林水産はかのように政治や経済と深く関わっています。国が動けば、食べものが動けば、雇用が動けば、経済が動けば、農業という世界はあらゆる方向に転びます。

そうだ忘れちゃいけません。気候の変化にだって、左右される。

それだけ動きが激しく、多様な変化に対する対応を求められる世界です。多様な変化に対して応えられなければ、つぶれます。

農業の生産高はここ20年で大きく減少しました。農家数も激減です。耕地面積も激減です。平均就業年齢は上がり続けてついに65歳です。農業政策の失敗は明らかです。

僕にはまだ先が見えません。けれど、先を見ていこうという、その意志だけはあります。

僕はTPPに条件付きでなら、賛成出来るのじゃないかと思います。

でもそれが満たされていない現段階では、反対の思いがあります。農業に対して行われるべき施策が、まったく十分に整っていません。しかし、TPPに参加するとしたら、いまなのかもと、思わないでもありません。

答えが、でていません。

農業という世界に、新しい考えかた、多様なもののみかた、多角的な物のみかたが、入ってくるべきだ、と僕は考えています。

ただ自由化せよという論者には、生産性の低い農業などつぶれてしまえばいい、という思いがあるように思えます。僕は違います。新しい農業のありかたがつくられるべきだ、と思っています。

農業といっても、ひとくちに言うことはできません。

米の生産、野菜の生産、果実の生産、作物ひとつひとつに、違いがあります。農業の技術はちゃんとコンテンツになるし、食育や環境問題まで、農業の領域は意外と手広です。それぞれに意味があって、目指す方向があります。

少なくとも、僕はこれ以上、農業を、高齢者や、あるいは中高年のものにしておくことに反対です。商売人ではなく、権力のものにしておくことに、反対です。世代間での変化と入れ替わりとがない業界は、やっぱり健全じゃあない。

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告知を頼まれましたので末尾にご紹介します。

11月20日(土)、21日(日)に、日比谷公園にて、ファーマーズ&キッズフェスタが開催されます。

http://farmers-kids.jp/

以下、コピペですが、イベントの紹介文です。

農業は国内の食料を確保する産業として重要な位置づけであるにも関わらず、衰退の危機にさらされています。更にはTPPを始めとして更なる農業の衰退が加速されようとしております。

皆さん考えてみてください。今確かに食料は他の国から輸入されてきています。でも、今お隣の中国は日本が資源が少ないことを逆手にとって、国として強い交渉力を持ってきています。

食料は大事な資源です。世界的に見て人口が爆発的に増える中、日本人の食べ物は本当に永遠に他の国が作ってくれるのでしょうか?

次世代の子供達へ、食べること、生きること、そして日本という国を残していくことをもっと真剣に考えてほしい。

そういった気持ちから今回「ファーマーズ&キッズフェスタ」と称しまして日本国内で食べ物を作る【生産者】と【子供達】が生きることの原点である『食』について、食べ物の生産者が主体となって伝えていく、そんなお祭りを行うことにいたしました。

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興味がおありの方は、考えるきっかけに、参加してみてはいかがでしょう。