2011年3月6日日曜日

通名や実名のインターネットは、交友関係や信頼関係を狭くするかもしれない

実名、通名、匿名に関する議論が熱いですね。


それはFacebookによる実名ウェブ社会の台頭で――というよりもむしろ、「炎上」以降の議論だと僕はとらえています。

(※ これは今回の本題とは関係ありませんが、その「炎上」という負のエネルギーが加熱しているそのことは、いかにいま世の中で心をむしばんでいる人が多いのか――という話にもつながってくるだろうとも考えています。)

そのなかで、通名や実名のインターネットは、交友関係を狭くするかもしれない――という考えが頭をもたげてきました。

バッシングがおきたとき、その非難はその対象に関わる人にまで飛び火することがあります。僕はそもそもこの飛び火自体を、とてもおかしなことだと考えています。しかし、実際には飛び火することがある、それは悲しい事実です。

たとえば、こんなこと。


僕はとてもひどいと思うのです。何がひどいかって、無実な人間の実名までさらされて、疑われて、嫌疑をかけられて、悪い印象をもたされて、バッシングの対象になっているっていうことです。

このことが彼らの一生の傷跡になるっていうことを、分かっていながら、こういう晒し上げにパワーを使う人達の「ジャッジしたい感情」。炎上。僕はとてもひどいと思うのです。

ただ……、悲しいくらいに、これは現在の状況。そういう「空気」。

そして、このようななかで実名、あるいは立場を明らかにした名前、通名、そういったものを用いてインターネットを使うことは、交友関係を狭くする可能性がある――と考えるようになってきました。

自分がどんなに注意をしても、問題を引き起こしそうな人と実名(など)でつるんでいれば、連鎖反応的に「とばっちり」を受けかねない社会になってきているということです。

そして実は、これに関連して、僕もひとつ、お話をすることがあります。

それは、非モテタイムズやソラノートをめぐる騒動の件についてです。

僕もこの騒動を認識していましたが、この件に言及するかどうか、正直なところ、迷っておりました。

ホットココア含め非モテタイムズの炎上マーケティング(と呼ばれかねない行為)などについて、僕も実際のところ、問題があると考えていたからです。その炎上マーケティングに、今回は特に、僕は正直、加担していると言われたくなかったのです。

フランチェスコさんやそらのさんとの件に限らずのことですが、僕はここで一度弁明をしておきたいと思います。

非モテタイムズに対してなにか多くの不服を持たれるみなさま、僕はもしかしたらどれだけのことが起きているのか、把握出来ていないのかもしれません。

僕は非モテタイムズで記事を書き、その姿勢にさほど問題を感じずに、今までを過ごしてきました。もしも、そのことで、何がしかの問題行為に僕が加担していたようなことがあるとするならば、それを本当に申し訳なく思います。

そして、おそらくそれを正確に把握出来ていない状態で、協力をしてきたことにも、これはもしかしたら誰かに頭を下げなければいけないのじゃないだろうか、という思いを抱えています。

僕は非モテタイムズやホットココアの姿勢に対して、その点で、特に問題がある――と考えています。

非モテタイムズで原稿を書いてきた立場である僕。

人によってはそんな僕を「取り巻き」なんていう言い方をするでしょう。実際にそう呼ばれ、書かれたことがあるから、それを意識していました。(そのときそう書かれたのは僕に非があったからです)

僕だけではありません。非モテタイムズやホットココアと何か仕事をしたことがある人や、交流をもったことがある人――。

「取り巻き」と呼ばれることを恐れる人や会社、僕は僕だけではないと思っています。

その「取り巻き」(と呼ばれかねない立場)の僕が、またこの騒動にからめて文章を書くとしたら、「また話題作りか」と言われかねないとも考えました。取り巻きのライターが炎上マーケティングに加担するのかという批判を、僕は恐れています。

僕は今後非モテタイムズで記事を書くことをやめようと思います。

フランチェスコさん、そらのさん、めがね王さん、えがみさんといった今回の騒動で名が挙がる人や、それらの人達に対する多くの意見に対して、僕は自分の好悪や正否のジャッジをくだすことはしません。僕がするべきことではないと思うからです。

僕は「他者を立場なくジャッジするひと」にはならないつもりです。

僕が僕の立場で(僕に対して)するべきことだと思ったのは、非モテタイムズで記事を書くことを辞め、その意志を表明することでした。

非モテタイムズというメディアに対する批判が相次ぐ中で、僕は「それでも書く」という立場をとれるほど、非モテタイムズの姿勢が強い肯定に値するものだと断言することができません。

何よりも、それでも「書き続ける」という判断は、ありなのかもしれませんが、僕の人生にとってはとても怖いです。

他人から誤解されることは基本的には止めようがないことですが、それでも出来る限りは止めたいものです。つまり僕は、おじけづいています。人の信頼を失うことは怖いことで、誤解されることは悲しいことです。

僕が非モテタイムズ、いいえ、メガネ王さんやえがみさんのやりかたに対して感じたことは「そうか、関わる人の信頼を、つまりこんなかたちで預かる人なのだ」ということです。そのことを僕は善悪では判断しません。

僕は、どう生きていきたいか。

僕は、なるべくはそういう「とばっちり」をかけさせまい、という態度をとってくれる人と親密にしていきたいというのが本音です。

正直、とばっちりそのものは、まあ、もう、仕方がない。

それに、汚点があるからって、あるいは嫌われそうな人だからって、避けようと思うのもなんか違うような気がします。

関わる人をそういう選び方で決めるのは、「あんな子とお友達になっちゃダメ」なんていう差別の親と同じ発想だと思うからです。

でも、そういう発想が頭をもたげてくるぐらい「とばっちり」のダメージがでかくなってきた……それが、ソーシャルウェブの時代の炎上の現実なのだとも思います。

そのようななかで、僕が非モテタイムズで書かない、すなわち距離をおくことを考えたときに、決定打になったのは「逡巡」「姿勢」です。

そこに誠意や努力、あるいは戸惑いや逡巡みたいなものがあるかどうか。

火の粉を周囲にかけさせまい、とする姿勢が、そこにあるかどうか。

つまり、僕は出来れば、メガネ王さんに今回のような言い争いを、えがみさんに今回のような対応の仕方を、慎んで欲しかった、あるいは立場をもう少し考えて欲しかったということです。関わる人へ誤解が飛び火せぬようなやりかたを、なるべくは選択してほしかった。

PVを増やすということは、書き手にとっては願っていることです。そして、注目されることでもって商いをする会社にとっては、必要なことです。

けれど。

その流れの中で、関わる人々、応援する人々、一緒に仕事をする人々の信頼を損ねかねない行為に「躊躇がない」。そんな姿勢は、人が遠ざかるきっかけに十分な理由じゃないかと思うのです。

僕は、えがみさんやメガネ王さんを、ある点では十分に信頼しています。ぶっちゃけ、会ったこともないけど。

それは僕の言葉で言うと「対応可能性」とでもいうべきことです。英語では「responsibility」、日本語では「責任」としばしば訳される概念です。

自分の行いでおこったことについて、その結果を、悪かろうがよかろうが、そのまま受け入れるという姿勢です。自分の身に振りかかるその結果をひきうける、という点です。自分の言論や行動によっておきたことに対して、「自分の立場」で対峙するという点です。

それがわかっているから、僕もこういうことを言います。

非モテタイムズの記事を配信するポータルサイトなどが、今回の騒動のことで、たとえば配信を停止するとしたら、それは、つまりそういうことだし、決して、間違った判断なんかじゃないと僕は思うのです。

もしも僕が匿名だったら、そうですね……また違う意見を持ったのかもしれないですね。

空気読めなんて言わないつもりでいたけど、僕の意見も空気なのかも、しれません。スルーでも、OKです。

参考&追記:)
僕が非モテタイムズでいままで書いていた記事はこんな記事です。

こういう記事たちを書かせてくれたことには、僕はとても感謝しています。そして、ゲイフレンドリーな記事などを他にもいくつか掲載し続けてくれたことも、本当にとても嬉しく思っています。

特に、http://himo2.jp/1819800のような記事は、ぜひ多くの人に読まれる記事であって欲しかったから。本当に感謝しています。

だから、どうか、あなたがたに協力している立場や、友好的な姿勢で接し続けているひとびとに対する、信頼の回復にももう少し気を配ってほしい、というのが僕の思いです。

追記(11/03/06/15:37)

この記事に温かい意見を寄せてくださった方々に感謝します。

ハム速さんの記事を取り上げて「ひどい」とこの記事で書いている件について。tweetで意見をいただきました。ハム速さんに対して「ひどい」と非難しているわけではなく、ハム速さんで取り上げられている「通名すら持たない2chユーザー」が多くの関係者を芋づる式に容疑者に仕立て上げる事件の「現況」にたいして「ひどい」と思うのです。ハム速さんについてのバッシングをする立場にはないと、僕もそのように思います。すみませんでした。

必要なのは「responsibility(対応可能性)」ではなく「accountability(説明可能性)」である、といったような意見もはてなブックマークで頂きました(原文は参照)。本当にそのとおりだと思います。

追記(同17:00)

はてなブックマークで「揉め事に対する自らのスタンスを開示しない」という姿勢を指摘されました。亀にはなりません。僕のスタンスを以下に示します。

  • インターネットに文章やコメントを書くときは、誹謗中傷を行うことは許されない。また、バックグランドに対する取材や裏付けも行わずに、インターネット上で軽はずみな批判をしてはならない。メガネ王さんの発言は、確かにフランチェス子さんを中傷しています。問題だと思います。(僕は今回の騒動のすべてを把握している自信がありません。始終ウォッチしていたわけでなく、気づいたら炎上になっていたので。ネット上でオープンになっているやりとりだけではなく、そうではないやりとりもあるでしょう。そこまで取材ができない僕はライターとして不足であると思います。求められているお答えとは違うかもしれません。申し訳ありません。)
  • 僕のライターとしての専門は、主にはゲイカルチャーや性的マイノリティの経済的・法的・社会的立場・そのほか現代の文化などについてのことです。非モテタイムズに寄稿していたのは「多様な価値観を肯定する」という理念をかかげていたことが主な理由でした。今回の騒動でその理念が明らかにゆらいでいたことも、ライターとして退く理由です。
  • 価値観の多様性にとどまらず、多角的な視野を持ったライターこそが、これからのインターネットメディアがライターとして登用すべき人材と考えます。そのような視座を獲得するためにも、今までの自分を反省し、学生という立場で学びを大事にすることこそ、現在の僕にとって必要なことと考えます。
  • 撤退そのものを批判する声に対してもお答えします。僕の信頼や名誉を回復し、これ以上僕が中傷などの行為に加担することを避ける一番の手段だと考えました。
  • 「去年の土下座事件」についてもお答えします。僕は昨年の自分の姿勢を非常に恥じています。インターネットの言論の品位を下げた下劣な行為であり、不愉快な思いをさせた行為だと思っています。ほんとうに恥じております。すみませんでした。
  • 非モテタイムズで僕が今まで書いたきた記事の内容については、ライターとしての力量は未熟ながら、それでもインターネットユーザーのひとりとして改めねばならないと思うことはありません。ライターとしては、より丁寧な取材に基づいた文章を心がけたいと思っています。HIVの啓発の現状や日本のゲイが置かれた現状などについて、ひとりのインターネットユーザーとして、これからも発言を考えていきたいと思っています。僕は非モテタイムズの記事で金銭の対価はいっさいうけとっていません。うけとるべきではないと思っています。
  • 「飛び火でなければ炎上させても構わない」とはまったく思っておりません。僕の考えは特にこちらにも表現しています。人をむやみにジャッジしたがる炎上の品性は下劣だと考えています。過ちに対するラベリングは、立場を明らかにした人間としては本当に恐ろしいことです。今後の自分の発言には、ブログや寄稿記事だけではなく、twitterやはてなブックマークでの発言も含め、より気を配っていきたいと思います。


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