2011年5月18日水曜日

ナイトドライブで聴きたいcapsuleニューアルバム「WORLD OF FANTASY」

音楽用語の定義は、ときにあやふやです。正確に言い表すのは難しいのですが、僕は中学生くらいのころから、エレクトロやテクノといった、いわゆる電子音楽のファンです。

バンドやロックといったものにはまるで興味が向かず、歌いあげるバラードやR&Bもほとんど聞かず、J-POPを離れて、僕がずっと聞いていたのは、ダンスミュージックとか、クラブミュージックとか呼ばれる電子音楽。

田舎ですから、CDショップはほとんど当てになりません。インターネットでアマチュアのミュージシャンを見つけて聞いたり、オンラインショップを検索したり、僕にとって電子音楽との出会いは、インターネットでした。

ところで、こういった音楽の一部は、しばしば「クラブ系」とひとくくりにされることがあります。

電子音楽とクラブミュージックとの相性が良いということは、説明するまでもないことだと思います。生演奏に重きを置かない電子音楽のスタイルは、DJやダンスフロアとの相性がいいし、生楽器ではできないアッパーなメロディラインやドラッギーなサウンドも、夜のクラブのテンションに合わせやすいということだと思います。

しかし、電子音楽はすべて「クラブ系」かというと、決してそうではないんですね。

僕がインターネットを通じて電子音楽と出会ったように、電子音楽はパソコンという機器を通して、オタクなカルチャーとも親和性が高いわけです。

シンセサイザーミュージックとはベクトルの違う方向から登場したデスクトップミュージック。音楽的にも文化的にも常に交差しながら、クラブカルチャーとオタクカルチャーという印象の違うふたつの文化に根ざした電子音楽は、あえて強く区分けされずに「テクノ」だとか「エレクトロ」だとか呼ばれてきたし、それは今も同じです。

クラブミュージックにしばしば分類されながら、しかし根ざしている文化は、実はオタク的なDTMの文化である――といった電子音楽は実は少なくありません。そしてこういった音楽の多くには、僕はひとつの傾向を強く感じることがあるのです。

それは「ヘッドフォンで聴きたい」という感覚です。

僕はこれをひそかに「クラブ系」と切り離し、「ヘッドフォン系」と呼ぶことがあります。

電子音楽で使われるサウンドは「クラブのフロアで聴きたい」と思わされるものがあります。爆音でフロアにかかっていることによって、いっそうその音楽が身体中にひびき、ノッてくる。そういうサウンドです。

しかし、一方で「これはクラブじゃなくて、ひとりでヘッドフォンで聴きたい」と思わされるサウンドがあるのです。ダウンテンポやアンビエントなどは多くがこのヘッドフォン系だと思いますが、アッパーなエレクトロポップでも、ヘッドフォン系だと思う音楽が思いのほか、存在します。

capsuleの中田ヤスタカは、このクラブ系とヘッドフォン系のサウンドを自在に行き来するミュージックメーカーです。だからこそ、彼はPerfumeというアイドルを生み出す力になった。

アイドルの文化は、インドアなオタク文化に根ざしつつ、アウトドア的な「現場主義」を持つライブ文化の両面を兼ね備えています。

オタク的なインドア文化と、クラバーにも近いライブ文化。双方の感性を持つリスナーにひびくキャッチーさが、彼のサウンドメイキングには現れているなと感じます。

さて、capsule新作「WORLD OF FANTASY」(11/05/25発売)は、ヘッドフォンで聴いても、フロアで聴いても素晴らしいアルバムです。しかし、このアルバムを聞くのにもっとも最適な「場所」は、多分そのどちらでもありません。

おそらくその最適な場所とは――「車内」。

ドライブ中に爆音で聴くことを想定されたアルバムなのだと、僕は考えています。

capsule
ヤマハミュージックコミュニケーションズ
発売日:2011-05-25

金沢出身の中田ヤスタカ。これは、僕の想像でしかありませんが、少年時代からのオタク的なDTMでの音楽制作と、上京後のクラブ文化でのDJ活動を経て、「ひとりで集中して音楽を聞ける場所(インドア的)」でありながら、かつ「爆音を響かせることができる場所(クラブ的)」として「ドライブ」を想定したのではないでしょうか。

オタク文化とクラブ文化の交差点として、アイドル文化に根ざすPerfumeを生んだ中田ヤスタカ。彼はさらなる発想で、オタク文化とクラブ文化の交差点を、車内、ドライブという場所に見つけたというわけです。

夜の首都高をドライブしながら聴きたいアルバムです。

STRIKER」ではクラクションのような音が使われているし、「OPEN THE GATE」で始まり、「CLOSE THE GATE」に終わるアルバム構成も、高速道路などでのドライブを想像させます。

また、表題曲にも選ばれた 「WORLD OF FANTASY」では、夜の首都高を鏡反転させた世界を未来的な車でドライブするMVが使われています。さらに、この曲は、カーオーディオのブランド、Pioneerの「Carrozzeria(カロッツェリア)」のCMソングにも選ばれています。

ただ僕は、残念ながら、運転免許を持っていないのですが。orz




■amazon ⇒ http://www.amazon.co.jp/dp/B004HA59U0/
■iTunes ⇒ http://itunes.apple.com/jp/artist/capsule/id73220595
■interview ⇒ http://natalie.mu/music/pp/capsule


Perfumeでの新作「レーザービーム/微かなカオリ」も要チェックですね。