2011年7月23日土曜日

好きなクラシック音楽の話 その3

前回、クラシック音楽についての心理的な壁、「教養」について書きました。

同じ主題が次々と装いを変えていく様子を純粋に楽しめばいいのだ、ということが分かるので、「変奏曲」は初心者でも親しみやすい――というような話でした。

初心者はこのように、変奏曲などの「楽しみかたが分かりやすい」曲から入門するのがいいのじゃないか、と僕は考えました。

クラシックの多くは歌詞を持たないので、いったいどういう意図でつくられた曲なのかが分かりにくい楽曲がかなりあります。

まさにそういうところが「クラシック音楽を聞くには教養が必要なのか……」と思わせる一因だと思うのですが、そういう曲ばかりかというとそうというわけでもありません。

そういうことについて調べていると、クラシック音楽の用語に「絶対音楽」「標題音楽」という二種類の分類があることを知りました。

絶対音楽とは「音楽の音楽による音楽のための音楽」とも言われるそうです。何か文学的に別の何かのテーマなどを表現しようとするのではなく、音楽そのものを表現しようとする音楽のことをそう呼びます。

ピアノ、ヴァイオリン、チェロと管弦楽のための協奏曲ハ長調」だとか、

ピアノ三重奏曲第一番ニ短調」だとか、

そういう(何も表現していないような)タイトルの曲の多くは「絶対音楽」であることが多いみたいです。

それに対して、音楽外の何かを表現しようとする楽曲のことを、「標題音楽」と言います。

初心者にとって分かりやすいのは圧倒的にこちらの楽曲なのだと思います。



この「標題音楽」が最も花開いたのは「ロマン派」と呼ばれる時代だそうで、文学と音楽の混淆がとりわけ多く見られたのだそうです。

前回取り上げたベートーヴェン「第九」は「ロマン派音楽の道しるべ」と呼ばれているらしく、音楽によって音楽でないなにものかを表現する試みのひとつだということは確かにわかります。まあ、第九は歌詞付きの楽曲なのですが。

ロマン派の先駆けとされるベートーヴェンの有名な標題音楽をひとつ。



第一楽章は「田舎に到着したときの晴れやかな気分」という標題が付いています。このような表題が各章ごとについているのです。

すなわち、標題音楽はこの標題をいかに感じ取ることが出来るか、というところを愉しめばいいんですね。つまりこの場合は、ヨーロッパの田舎の風景をイメージしながら聞けばいい。

その楽曲が標題音楽なのか、絶対音楽なのか。まずそこを把握することは、最も大事なクラシック入門の初歩の初歩ステップなのではないかと僕は思います。

なんといっても、標題音楽は自分の気に入る音楽を見つけやすいです。

すこし暗い曲が好きならそういう標題のものを、美しい透き通るような曲が好きならそういった標題のものを探し当てれば良いわけですから。



というわけで、今回は、その他にも「わかりやすい標題音楽」を集めてみました。紹介するのは、すべてロマン派です。



まずは、サン・サーンスの組曲「動物の謝肉祭」。

全部で14曲からなる組曲です。

聞けばわかります。まず、僕が最も気に入っている第5曲の「象」を聞いてみてください。



わかりますよね。

巨体を揺らして独特の歩調であゆむ象を表しているコントラバスの低音が。

僕は弦楽器の中でもダントツにコントラバスが好きです。あの大きさ、そして様々な楽曲で低音をならしつづけるあの渋さと重厚さ。コントラバスの協奏曲というのは、その数自体がとても少ないのですが、この「象」はその数少ない協奏曲の一つです。

「動物の謝肉祭」は子ども向けの管弦楽として人気があるそうで、第5曲「象」以外も分かりやすいです。すべて聞けばひとつは好きな曲が見つかるんじゃないでしょうか。

ちなみに、第4曲の「亀」は、運動会でよく流れる「あの曲」をスローに演奏した曲になってます。

次はモーリス・ラヴェルの「水の戯れ」。



水をテーマにしたピアノ曲はさがすと結構見つかります。

美しく流れてはじけるような水のイメージが伝わってきますよね。ピアノは音色が澄んでいるというか、弦や打楽器に比べてにごりのない感じの音を出すきがします。そういうところが水の表現に向いているのだろうなと思います。

他にもフランツ・リストの「エステ荘の噴水」、ドビュッシーの「水に映る影」などいろいろあります。

それから、ロベルト・シューマンの有名曲「トロイメライ」。



たぶん、誰もが聞いたことのあるこの曲。

組曲「子どもの情景」にはいっているこの曲ですが、トロイメライとは「夢」のこと。

その他にも、シューマンはロマン派の代表格と言える作曲家らしく、文学的教養も深かったためか、多くの標題音楽を残しているようです。

美しい情景を思い浮かべながらいろいろと聴き漁ってみれば、少なくとも、一曲くらいはお気に入りの標題音楽を見つけられるのではないかと思います。