2011年7月13日水曜日

異世界渡りファンタジー、ゼルダの伝説

僕は「異世界渡り」もののファンタジーが大好きです。

「異世界」ファンタジーではなく、「異世界渡り」もののファンタジー。

ある日突然、見知らぬ異世界に迷いこんでしまったり、連れて行かれてしまったり、あるいは転生してしまったり。目が覚めるとそこは異世界だったとか、トンネルをぬけるとそこはふしぎの国でしたとか。

たとえばジブリで言うと「千と千尋の神隠し」がそうですし、僕が大好きな小野不由美「十二国記」シリーズもそうです。

世界的に大ヒットを記録したJ.K.ローリング「ハリー・ポッター」シリーズもそうですし、児童文学で言えば古典中の古典C.S.ルイス「ナルニア国物語」シリーズもそうです。

さらに、ファンタジーのライトノベルでいうと「ゼロの使い魔」なんかがそうですし、ちょっとイレギュラーなものもあげると、ドラえもんの映画大長編シリーズのほとんどがそうだったりもします。

現実世界のどこかが不思議の国へ通じているかもしれないというロマン。少年時代の僕は、こういう本を読みながら眠りにつくたびに、朝目覚めたら違うふしぎの国にトリップしていたらいいのに、なんて妄想をふくらませる子どもでした。

草葉の陰や廃ビルのなか、なにか違う世界が待っていそうな場所を見つけるたびに、妄想が膨らんでいたものです。ま、厨二病といえば、厨二病です。

ところでこういう「異世界渡り」もののシリーズのほとんどは、往々にして何故か主人公が「勇者」的な立場でいるというのが相場です。

十二国記の陽子は勇者どころか異世界の国家をすべる王だし、ハリー・ポッターのハリーは伝説の魔法使いの末裔だし、ゼロの使い魔は召喚された使い魔という設定の「勇者」そのものです。異世界におけるなんらかの問題を解決するためにそこにおとずれた存在。

世界をわたった時点で、その世界を守ったり救ったり問題を解決したりする、なんらかの使命を課せられている存在。

それが「異世界渡り」ファンタジーの王道です。

そんな「異世界渡り」ものの作品の中で僕がひときわ素晴らしい名作だ、と思っているゲームがあります。

ゼルダの伝説 夢をみる島」です。(以下の記述にはこの作品のネタバレをふくみます

このゲームの主人公キャラクターは多くの場合リンクと呼ばれる少年なのですが、名前は自由に入力することができます。

この主人公キャラクターはまるで話さず、この主人公キャラクターがどういった思いでこの物語を冒険しているかということは、ほとんど一切語られないまま、ストーリーが始まります。

なぜ語られないかというと、語るまでもなく自明のことが、実は主人公の行動理由と言えるからです。プレイヤーの意思が、そのままその世界のリンクの行動理由なのです。

その世界(ゲーム)をクリアし、おわらせること」。

ゲームを進行していくと、その世界「夢をみる島」の秘密があきらかになってきます。

その世界は「かぜのさかな」が見ている夢なのだ。主人公に課せられた使命は、悪夢に蝕まれている「かぜのさかな」を目覚めさせること。

主人公が「かぜのさかな」を目覚めさせれば、その世界、夢をみる島は、夢からさめて、終演を迎えます。ゲームがおわるのです。それこそが、主人公、いや、プレイヤー自身の目的であるわけです。

異世界渡りファンタジーとしてこれ以上の設定があるでしょうか。プレイヤーそのものが使命を持ってゲームの、いや、夢の世界で戦う。その使命とは、その世界を終わらせること。

ゲーム世界のヒロインであるマリンの言葉を紹介したい。


このヤシのみは いったい
どこからくるのかな…


うみのむこうには、なにもないって
タリンはいってたけれど…


きっと なにかがあるって
わたし しんじてるの!


りんく を みつけたとき
わたしドキドキしたわ。


このひとは うみのむこうから
なにかを つげにきたんだって


わたしが カモメだったら…
ずっと とおくへ とんでいくのに


いろんなところへ いって
いろんなひとたちと うたうの


「かぜのさかな」に いのれば
わたしのおねがい かなうのかしら


ねえりんく ちゃんときいてる?


いつか りんくの ふるさとに
いってみたいな…


なあんてね! フフフ…


異世界の少女は、主人公がもといた世界のことを夢想しながら、それでもこの主人公によって、夢ごと「かぜのさかな」の目覚めで、消えてしまうのです。

僕はRPGゲームの最高傑作にかぞえられる作品なのではないかと思っています。

ゼルダの伝説 夢をみる島 - Wikipedia

それがなんと先月、ニンテンドー3DSで復活したと聞いて驚きました。

旧機種用ゲームソフトのダウンロード配信サービスのひとつらしく、3Dでリメイクされたというわけではないらしいのですが、あまりの懐かしさにもう一度プレイしてみたくなりました。

任天堂
発売日:1998-12-12


以下、他にも異世界渡りモノの作品紹介。


異世界を「密室」にたとえた密室ものミステリーファンタジー。高里椎奈作品の中でもこれは、と思わされた作品のひとつ。

大長編「ドラえもん」のなかでも特に傑作だと思う作品。

チャイナ・ミエヴィル
河出書房新社
発売日:2010-08-17

イギリスファンタジー・SF界のトップランナー、チャイナ・ミエヴィルが描いた傑作。ハリー・ポッターがいまいち楽しめなかったあなたにもぜひ。