2011年9月11日日曜日

3.11から半年 ― 311以降のポピュラリティ

震災以降、様々な形で、多くの分野で、自分たちが何をしていけばいいのかを模索している人が増えたような印象を僕は持っています。

アニメや漫画、小説といった物語作品において、今後、どんな作品が生まれてくるのか、僕は興味津々です。今後生まれてくるだろう人気作品の傾向について、個人的にいくつか予測を立ててみたいと思います。

1. 無関心をゆるす物語

「自分の専門外のことについては無関心であって良い」「自分の専門外のことについては責任を感じる必要はない」という姿勢を肯定する作品が、多く生産されるような気がします。

2. 起点と終点が同じ物語

一話完結の作品などに多いですが、キャラクターの置かれる立場がおびやかされるといったことはなく、「非日常を冒険して日常に帰ってくる」といったような形式の作品が、多く生産されるような気がします。

3. 主張や強いテーマ性を欠く物語

多くの物語作家が、震災を受けて自らの作品に強いテーマ性を盛り込もうとしているかもしれません。しかし、そういった主張、思考、議論といったものから逃れることのできる物語をこそ求める、そんな読者も数多くいるだろうと僕は見ています。

4. せまい世界のちいさな事件を描く物語

311以前、多くのメディアがひっきりなしに報じていたものを覚えていますか? 受験のカンニング問題のような瑣末な事件で騒いでいたのがこの国です。そこへゆりもどされるかのように、短く狭く小さな出来事について、ていねいにとりあげる作品が望まれるのではないかと考えています。

5. 短く、ぴりりとした山椒のような刺激の物語

日常に対する刺激、けれどそれが長続きする必要はない。長引く原発問題の処理をずっと考えさせられることにはうんざりしてしまったような空気を感じます。311以前、事件が起きては忘れられ、事件が起きては忘れられ、そういったことの繰り返しだった過去を思い出すかのように、すぐ忘れてしまえるような短い刺激をもとめる人が多くなっているのではないかなと思っています。

実はこの5つの条件は、ベストセラーになっているある作品がすべて条件を満たしています。

東川 篤哉
小学館
発売日:2010-09-02

この作品自体は311以前に書かれた作品で、プロモーションが仕掛けられ始めたのも311以前ですが、311以降のいま、より求められている作風なのかもしれないと感じたりもします。

僕はこの表紙を描いている中村佑介さんというイラストレーターが好きで、この人のポピュラリティに対する考え方などにはずいぶん影響を受けました。

吉祥寺の本屋で働いていたときには、美術系の書籍の担当だったこともあって、自分で大きなポップをつくってこの人の画集を宣伝したことを覚えています。

「中村佑介の表紙にすれば小説が売れるんだろ」なんて揶揄する人もいますが、なぜこの人のイラストがそういう力を持つのか、分析できている人はまだあまりいないのではないでしょうか。


中村 佑介
飛鳥新社
発売日:2009-08-11


森見 登美彦
角川グループパブリッシング
発売日:2008-12-25


上田 早夕里
角川春樹事務所
発売日:2011-03-15


中村さんは、マニアや専門家やオタクのほうは向かない。眉をひそめられるようなものは描かない。日々を生きるそのへんのおにいちゃんやおばあちゃんに、ちゃんとすごいねと言ってもらえる絵を書こうとする人だ。