2011年9月27日火曜日

自己充足系草食世代男子、ただいま就職活動中。

原っぱにたくさん草が生えていて、それをモグモグしている牛や羊はとてものどかで、おだやかです。

草食系という言葉に対して僕たちが抱くイメージは、おだやかで、ガツガツせずに充足し、ゆるやかな日常に幸福を見出す、そういうものだと思います。

2011年、日本は未曾有の危機に陥りました。震災のみならず、原発や経済問題、政治の不安定、そして従来から続く高齢化社会や雇用の不安定さなどの問題がミルフィーユのように数十段重ねとなって、いったい未来はどうなるんだと思えてくる情勢です。

しかし震災によって暮らしが大きく変わった人々がいる一方で、日本の多くの若者たちの目の前に茫漠とした不安な未来が横たわっていたのは、従来とまったくかわっていないというところなんじゃないでしょうか。

僕ら時代に育った草食系の若者(それは僕自身も含むのですが)が構築してきた哲学のひとつに、「自己充足」というものがあると思います。

様々な問題があり、あらゆるものが頭打ちになってはいる。けれど、日本はそれでも豊かだ。わけあってくらし、つつましさのなかで、日々を豊かに暮らせばいい。楽しめばいい。ここには食べるものがあり、眠るところがある。もしかしたら未来がある日突然崩壊してしまうかもしれないけれども、それを考えてみたって仕方がない。友だちを大切にしながら、心豊かに、安くシンプルなくらしを。

これが僕のイメージする「自己充足」の哲学です。僕自身もこの哲学は理解しているつもり。

けれど、草食系って本当に穏やかなもんなんでしょうかね。

先に肉食系の話を考えてみます。

肉食獣の王たるライオン。僕たちが抱くイメージは、どんなものでしょうか。温厚さとは無縁で、獰猛かつ非常な生き物。わが子を蹴落とし、草食動物を食いちぎる。

けれど実際はそればかりではないのです。ライオンのメスは捕食を成功させるため、グループを作って協力し合いながら行動するのだといいます。分け前をめぐってオスは争うことがありますが、しかしオスもメスも、ライオンは狩りをするときには集団で協力しあうという特徴があります。

他のネコ科にはあまり見られない属性ですが、ライオンは社会性を持ち、プライドと呼ばれる群れを形成します。

飢えをしのぐために、本気で協力し合うことができる。

「プライド(群れ)」のなかまと頭をこすり合わせる、これはよくみられる行動だそうです

それと比較したいのは、草食性の魚たち。

ウシやヒツジは草がなくなれば移動して、新たな餌場を見つけることができます。あちらこちらと穏やかに草を食みながら移動し、いつライオンが襲ってくるかはわからないけれども、自身の存在を脅かすものたちからは、逃げることで手を打つのが、彼らです。

けれど、魚たち。たとえば、渓流に住み、苔をはむ魚たちは、往々にしてそうはいきません。

一匹獲物を捉えればしばらくは腹が保てる肉食動物たちとは違い、岩に生えた苔はカロリーがひくいために、渓流の魚たちは苔を探して食べるということをずっと続けなくてはいけないのです。ウシやヒツジのように餌場を変えることは簡単にはできないんです。

アユは縄張り意識が強く、そして、草食系に僕たちがもつイメージとは裏腹に、とても獰猛な行動を取る魚です。自分のテリトリーに別のアユが入ってきたとき、二匹はどちらかが死ぬまで争い続けます。殺しあうのです。

それは自らの餌場を守るため。他の魚がいると、自分の取り分が減るので、都合が悪いのです。ライオンが狩りをするために仲間と社会をつくるのに対し、アユは生きるために孤独を選ばなければいけない、悲しい魚なのです。

草食系の若者たちは、おそらくすべて皆がいつまでもヒツジではいられない、と僕は思います。

豊かな餌場があるうちがいい。いまはやりのノマドワーカーのように、生きる場所を選びながら生きていけばいい。でもそれは永遠に僕たちがまったりしていられれば、の話です。

いつの日か渓流に突き落とされるときがくるかもしれない。死に物狂いで苔を食むようになったとき、僕らは――

(私の)その違和感の核にあるのは、古市君が何度か使っている、「お金がなくても仲間とそこそこ楽しく暮らしている」といった表現への疑念だ。そのような生活は、どれほど持続可能(サステイナブル)なものなのか? 実際にはなかなかシビアなのではないか。……上記の表現の中の「お金がなくても」という部分、つまり生活を支える物質的基盤ということだ。古市君自身が「帰国後の若者たちは、低賃金で不安定な労働に就いていることも多い」と書いているが、このように脆弱な基盤の上に載っている生活が、どれほどの時間的スパンで成立しうるのかについて、私は危惧を覚える。たとえば病気になったら、たとえば子どもができたら、たとえば「低賃金で不安定な」仕事すら失ったら、友だちとルームシェアして時々ホームパーティを開く生活は続けていけるのだろうか。(古市憲寿『希望難民ご一行様』・本田由紀による解説より)


孤独を選ばなければいけない悲しい魚になるまえに、必要なことはなんでしょう。

ライオンのように一緒に餌を狩れるプライドをもつこと?

他人と違う、自分だけのための欲望を満たす餌を探すのではなく、仲間と分け合う仕事につけるかどうか?

僕も就職活動(ジョブハンティング)、がんばらなきゃ。



古市 憲寿,本田 由紀
光文社
発売日:2010-08-17


汀 こるもの
講談社
発売日:2008-10-07


安田雪
アスコム
発売日:2011-09-20


ルフィの仲間力は、ツッコミたいと思うところもあるけれど、学びたいと思うところがたくさんあります。

渓流も草原も抜け出して、大海原で仲間と海賊をやるのが、正解なのかも。

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