2011年10月26日水曜日

Alexandra Stan(アレクサンドラ・スタン)「Saxobeat」でサックスを聞いてみたいと思うようになった

日本のエレクトリックミュージックチャートを見ていると、もうここ一年くらいはずっと中田ヤスタカの一人勝ち状態が続いているような印象です。

エレクトロ系のチューンでも、何故かK-POPはチャートから外れているので、実際は中田ヤスタカだけではなく、K-POPからもエレクトロポップのヒットは排出されているのでしょう。とはいえ、中田ヤスタカ以降、エレクトロのシーンで活躍する日本のアーティストがなかなか出てこないという状態なわけで、改めて中田ヤスタカはすごいなと感じる次第です。

ただ質の高いエレクトロが作られていないのか、というとそうではないわけです。ニコニコ動画のVocaloidランキングをチェックしてれば、プロ顔負けのエレクトリック・チューンに出会うことも少なくありません。

いまや日本のエレクトリックミュージック市場で商業的な成功を収めるには、楽曲のレベルの高さだけでは通用しないということなのかな、と感じます。アーティストという言葉が示すように、アートとしての戦略や意味、文化的な脈絡といった要素が、商業的な成功を大きく左右しているように思います。

個人的には先日もブログで紹介したgalaxias!には最も期待しているのですが、もっと他にも面白い日本のアーティストが出てくるといいなあと思っています。

海外のエレクトリック・ミュージックも嫌いではないのですが、文化的な脈絡をうまく感じ取れないのが苦手です。レディー・ガガのようにメッセージやアーティスト性が明確な場合はともかく、特にクラブミュージックシーンで活躍するアーティストは、歌詞もファッションもうまく感じ取ることができないような気がしています。これも欧米コンプレックスのようなものなんでしょうか。

ただそんななかでも「これは好きだ!」と明確に感じる曲に出会うこともあります。ルーマニアの歌姫、アレクサンドラ・スタン(Alexandra Stan)の楽曲もそのひとつです。

調べによると、幼少の頃から音楽的才能を表し、家族からのサポートを受けながら育ち、音楽祭や音楽コンサートなどにおいて才能を発揮し、そして大手レコード会社と契約しデビューという王道、順風満帆な音楽的成功の道を歩んでいるミュージシャンです。シンガーソングライターとして、ボーカルと作曲の両方をこなしています。

先月発売されたばかりのデビューアルバム「Saxobeat」にはタイトル通り、アルトサックスの音色が特徴的な楽曲がいくつも収録されています。

ただし、音楽ジャンルとしては、ダンスポップ、ユーロポップ、ハウスあたりに分類されると思います。でもタワレコさんがTwitterでエレクトロR&Bとも紹介してたので、そうなのかもしれません(違うと思うけど…)。サックスは特徴的に一部に使われているだけですが、以下のYouTubeは表題曲にもなっている「Mr.Saxobeat」です。



サックスといえば僕にとってはジャズの代名詞のようなイメージの楽器。

実をいうと、僕にとってサックスはずっと苦手な、興味のない音色の楽器でした。というよりも僕は金管楽器全般があまり好きではなくて(とはいってもサックスは構造上は木管楽器に分類されるらしいですが……でもほぼ金管楽器みたいなもんだろと僕は思っています)、クラシック音楽を聞くときも弦楽器とピアノを中心に聞くことが多く、ジャズなどには特に疎いのです。サックスはほとんどさっぱりです。

そんな苦手な楽器のひとつだったサックスをダンスポップに取り入れた彼女の音楽。聴いた時、サックスなのに耳が心地よい、と驚きました。歌詞の意味もよく知らないし、彼女の音楽にある文化的脈絡もよくわかりません。ただ、クラブカルチャーの享楽的なニュアンスを感じる一方で、そこにジャズの主役たるアルトサックスが顔を表す奇妙なバランスに、単純化させまいとする意志を感じるような気がします。

イギリス英語ではBGMのことをウォールペーパー・ミュージックというそうですが、日本におけるジャズといえば、おしゃれなカフェやバーで流されるBGMというイメージが僕の中にはあります。

しかしそれはジャズが市民的な人気を獲得している証左というわけではないのだ、と友人のジャズファンは語ります。理解されないからこそ、飾り紙のような扱いをされるのだと。それは英字新聞を包み紙に使うのと似ている、と。本来は読み解かれるべき音楽なのに、ただ消費される音楽になっているのだと。

ポップミュージックを、読み解くように聴く、そういう行為を僕は好んでいます。が、そんななかでサックスの音色を壁紙のように捉えてきた自分の感覚に、なんとなく違和感のようなものを感じたような気がします。

あくまでサックスはひとつの音色として選ばれただけであり、この「Saxobeat」にジャズから始まるサックス音楽の文脈はまったく関係ないかもしれません。実際、まったく関係ないような気がします。ジャズファンからしてみれば、この楽曲でサックスを語るな、と言われそうな気すらします。だいたい一曲通して聞くと、そんなにサックスばかり使われているわけでもないですしね。

ただ、僕にとってはサックスミュージックに興味を向けさせられるような意志を感じるサウンドでした。日本版のアルバム発売を期待したいです。

Alexandra Stan
Ultra Records
発売日:2011-10-24

上記のアルバムはアメリカ版の輸入盤です。ちなみに、ドイツ版は9月に発売されています。ちなみに実は結構エロい歌詞みたいですね。