2011年11月14日月曜日

JALAPAGOS展を見に行って来ました

先週、福岡・天神で行われている『JALAPAGOS展』という美術展に行って来ました。

今月と先々月の二ヶ月間で、大小あわせて十個ほどの美術展を鑑賞してきたのですが、福岡・天神で行われていたこの『JALAPAGOS展』がもっとも楽しい展示だったので、今日はそれを紹介したいと思います。

もともとは東京のTOKYO DESIGNERS WEEKに際して企画された現代アート展です。今回見てきたのは、それを福岡に持ち込んだ展示で、内容も東京のものとは違ったものが展示されていました。もちろん、ジャラパゴスとは、ジャパンとガラパゴスの造語。

昨今よくいわれるガラパゴス的な日本の独自の文化をテーマにした現代美術展です。

岡本瑛里「かやせ、もどせ」 ©2010-2011 ~EllieOkamoto

岡本瑛里「かやせ、もどせ」。

「神隠し」を主題にした作品です。この作品の英題は「Spirited Away」で、宮崎駿「千と千尋の神隠し」の英題と同じ。色合いがとても美しくて、神格化されたニホンオオカミの神々しさが青白い体躯で表現されています。

現代的な鮮やかさをもつ色使いと神隠しという日本的な主題が合わさった、JALAPAGOSの名にふさわしい想像力だと感じました。かつて日本人たちは神隠しを行う彼ら精霊たちに「畏れ」を抱いていましたが、いま私たちは描かれた彼らの姿を見て、何を思うでしょうか。

山本竜基「上昇志降」 © Copyright TAKAHASHI COLLECTION.

タイトルがぴったりですね。山本竜基「上昇志降」。

男子学生たちがひとつのハシゴに群がって、投げ出され、振り回され、しがみつき、蹴落とすさまが描かれています。面白いのが、よくみるとみんな似たような顔と似たような髪型をした画一化された学生であることです。また、この絵の上下と奥行きが混同されそうな描き方になっているのも、視覚的に面白いところです。

鴻池朋子「ナイファーライフ(一部分)」©KONOIKE Tomoko 

鴻池朋子「ナイファーライフ」。

これはかなり大きい作品で、なんて労作なんだ、と感じた作品でもあります。無数のナイフが獣と渦となって少女を取り囲む絵です。このかたのインタビューを読んだことがあるのですが、そのとき彼女が話していたことは、「個性や作家の思惑は関係ない」ということでした。いっぽんいっぽんのナイフまで非常にていねいに真面目に描かれていて、世界観のために手が抜かれていない。ただシンプルに、尊敬できるプロの仕事だと感じました。

ジャラパゴス展では複数の展示がありました。紹介した3つの作品はその一部です。

紹介したのは、僕が最も気に入った3作品です。

上記の作品いずれにも感じたのは、強い批評性をもつ作品でありながらも、絵画として美しく、技術的な完成度も高い労作であること。あいまいな言葉で言うと、プライドのある作品、という印象です。

現代アートが抱える問題にたいするアーティスト側からの応答であるようにも感じました。強い批評性の名のもとにパフォーマンスへ過剰に偏ったり、困惑を呼び込むことを目的とするかのような作品が注目を集めたりすることで、現代アートに対する市井の目は昨今かなり厳しく冷淡なものになっているところがあると思います。

「あんなものだったら私にでもつくれる」と思わせた現代アートは数えきれないほどあるはずです。

それはそれで良いのだと肯定的に見る目もあって良いわけですし、世界のアートの文脈やヒストリー、哲学の流れを相手にした現代アートは、そういうすれ違いを必然的に産み出してしまうものなのかもしれません。

しかし、そういうことに、僕はいっぽうでもやもやとしたものを感じてしまいます。

「プロの芸術家ってすごいな」と、日本でふつうにアート展に出かけていったひとりの若者にも感じさせて欲しい。世界の文脈なんかしらない。だって、今回はジャラパゴス展でしょう。その思いに答えてくれたのが、特にこの三作でした。

特に最後に紹介した「ナイファーライフ」は間近で見て、「よくもこんなものを描いた」と感じさせるほどの力のこもった作品でした。同じ形のナイフを丁寧に何本も何本も描き続ける真面目さと抑制の効いた色使いにも好感を覚えました。シリーズの作品だということで、絵巻物のようにこの世界観は拡張され続けているみたいです。

展示は11月27日まで。一般400円。会期中は再入場可能なので、僕はもしかしたらもう一度見に行くかもしれません。