2011年12月18日日曜日

2011年個人的邦楽セレクション

2011年に発表された国内音楽作品の特に気に入ったものをまとめることにしました。

短くまとめたレビューも書いておきます。

◆アルバム部門

capsule
ヤマハミュージックコミュニケーションズ
発売日:2011-05-25

capsuleの最新アルバム「WORLD OF FANTASY」。国内エレクトロポップにおいて圧倒的な一人勝ちを続けている中田ヤスタカ。90年代前半的レイブサウンドをリバイバル的に取り入れてきた本作は正直言って一部のファンにはすこぶる評判が悪い。しかし、「初期のほうが良かった」というのはいまやcapsule最新作に投げかけられる常套句となりつつあり、あまりにもナンセンス。何年も前に聞いたような音作りで古臭くて冗長、といった評価も多いけれど、その数年前のダサい音でも臆面も無くやってしまうことこそが中田ヤスタカなのだと言わざるを得ない。普通に考えていたらできないことをやってしまうから中田ヤスタカという男はかっこいいのだ。

galaxias!
NAYUTAWAVE RECORDS
発売日:2011-11-23

柴咲コウ+DECO*27+Teddyloidによる音楽ユニットgalaxias!のデビューアルバム「galaxias!」。はやぶさや宇宙兄弟など今年は「宇宙ブーム」がきていたような気がする。多様性志向の時代のなか、国家間や地域間などで生まれる衝突や問題を回避したい思いが、僕たちの無意識を宇宙へと向かわせているような思いが拭えない。宇宙的なモチーフを取り入れた彼らのデビューアルバムには、二十代のクリエイターふたりの未来や社会に対する直感的な表現と、それを肯定的に発信しようとする柴咲コウの歌声が見事に融合している。

FPM
avex trax
発売日:2011-11-16

FPM待望のオリジナルアルバム「QLASSIX」。カンヌ国際広告賞を受賞した「ユニクロ・カレンダー」に提供した楽曲集はクラシックとダンスミュージックの融合。クラシックと電子音楽の融合というコンセプトそのものは決して目新しいものではない。ただ、耳なじみのある有名曲をシンプルに聞き心地よく衒いのないクラブサウンドに仕立てて訴求するという手法は、ユニクロのシンプルなカジュアル性の広告を見事に表現している点であたらしく、気持ちがいい。

◆ミュージックビデオ部門



世界に向けて原宿×Kawaiiを拡張して発信する象徴・きゃりーぱみゅぱみゅの「PONPONPON」。CoolではなくWeirdなJAPANを体現するこのMVは、日本語ならではのオノマトペを駆使した中毒的なサウンドと、グロテスクさをまとったキュートなファッションがすばらしい作品。村上隆のアイボールを思わせる眼球や、おもちゃのあふれる部屋が示す幼児性と過剰性の表現など、アート方面からも評価が高い。

◆アニメソング部門



魔法少女まどか☆マギカのエンディングテーマ・Kalafina「Magia」。物語の転換点となる第10話では挿入歌として使われた。脚本を読んで書いたらこうなった、という梶浦由記の歌詞は見事に作品の世界観を表現している。日常性を破壊した第三話から登場したダークなエンディングは、明るく表現されたオープニングの「コネクト」との対比が鮮やかで、どちらもとても甲乙付けがたい。個人的な好みでこちらを挙げたけれど、第10話で反転して明らかになる「コネクト」の表現も見事というほかない。

◆ボーカロイド部門



EZFG「サイバーサンダーサイダー」。元はVY1を用いて発表された楽曲だったが、VY1V3の公式デモ楽曲にも選ばれ、上記のYouTubeビデオがアップロードされた。VY1シリーズは人格性がとりわけ低いボーカロイドであり、本作の動画にもキャラクタービジュアルは用いられない。作曲者のEZFG氏もボーカロイド文化にみられる「ボカロP」の肩書きは断っており、棒人間のモチーフもあいまってキャラクター性を徹底的に排除しているかのような印象を受ける。エレクトロとしての完成度も極めて高く、感情のうねりと自己否定に対する応答を描いた歌詞の完成度も素晴らしい。

◆ニコニコインディーズ部門



Chouchou(シュシュ)「eclipse」。Chouchouは「バーチャルワールドという国境のない果ての地で生まれた音楽ユニット」を称するJuliet Heberle(ボーカル)とarabesque(作曲)のユニット。良質なエレクトロニカとしてニコニコインディーズカテゴリの中でも再生数5万超の人気楽曲となっている。極めてニコニコらしくない楽曲のようにも思える。退廃的で低温度な世界観を映し出す光と影のコントラストが印象的なMVは、それ自体ハイレベルなアートフィルムとなっている。ユニットの名前とこの映像美から「リリイ・シュシュのすべて」を想起する人も少なくないだろうと思う。YouTube投稿アカウントは「chouchouholic」となっており、やはりこれも「リリイホリック」を想起させる。

◆ダウンロード配信部門



さよならポニーテール「ナタリー」。期間限定で無料ダウンロード配信楽曲として提供された。音楽ニュースサイト「ナタリー」のために作られた本作は、さよならポニーテールがソーシャルネットから登場した音楽ユニットであることをもっとも象徴的に表す楽曲。絵と音楽で物語の世界観を作る手法と、そのやわらかで優しい空気感は、競争社会の自由ではなく、楽しさと癒しの自由をまとっている。音楽ファンを引きつけてやまない彼女たちの世界には今後も注目したい。