2011年12月22日木曜日

東野圭吾氏らは電子書籍化を認めるべきか?

東野圭吾さんたち作家7名がスキャン代行業者にたいして提訴した件について、さっそくインターネット上では意見が飛び交っています。

僕自身はまだ紙の本のほうが便利だと感じており、電子書籍化が進んでいないことにさほどの不服はありません。正直に申し上げて、代行業者が有罪でも無罪でもあまり興味はありません。

なぜなら僕自身は紙の書籍をじっさい便利だと思っているし、代行業者の恩恵とも電子書籍の恩恵とも比較的無縁です。裁断でつくったものだろうがなんだろうが、いまは電子書籍にあまり用がないのです。

ただ、ひとこと言うならば、著作権者が読者の行為に対して不服を申し立てるのは賢い行為だと思えません。そのあたりの意見については、すでに多くの人が述べておられるので割愛します。

電子書籍には多くの人が近い未来のイメージを抱いています。著作権者による権利侵害にかかる提訴は、そういったイメージのなかで「時代の逆行」を印象づける以上のことはありません。

さて、今回の件で僕がもっとも心配なのは、提訴を起こした著者のかたがたのなかに、素晴らしい著者のかたがたがおられることです。

こんな提訴のことくらいで敬意を失っていいような方々だとは、個人的にはとうてい思えません。そしてどうか多くの人にとっても、それほどの敬意の対象であって欲しいとも思っています。

ノワールの傑作「白夜行」を書いた東野圭吾さんや、歴史小説の大作「蒼穹の昴」を書いた浅田次郎さんは、この提訴の件だけで、見損なわれてしまうような才能ではありません。

これはもちろん、今回の提訴について著者の先生方を評価するということではありません。むしろ、さっそく強く反発している在野の論客のみなさんに分があるだろうと思っています。著作権者が多くの読者を敵にまわすような発言、これは問題視されます。批判されるのも致し方ない。

ただ、この機に乗じて、才能ある作家の方々に対して「情報弱者」だの「あさましいポジショントーク」だのという言葉を投げかけて悦に入っている一部の方々はいただけません。ましてやその作家の文学性にまで踏み込んで話をしようなどとは。

東野圭吾さんの最新作「マスカレード・ホテル」は、冒頭、接客業の心意気をもって読者を掴むところから、視点が交互する中盤、そして終盤、一気に読ませる良質のエンタメです。このところの出版ペースも含めて、やはり実力ある素晴らしい作家だと改めて感じました。

そういった評価は今回の提訴の是非程度でかわるものではありませんし、彼らへの敬意は今回の提訴における発言程度で見損なわれるような軽いものではありません。

今回の提訴をされた作家のかたがたは、電子書籍化をほとんど認めていらっしゃらない方々です。

東野圭吾さんたちは、果たして電子書籍化を認めるべきでしょうか?

僕の答えは「NO」。電子書籍化など認めてくださらなくても、高価なハードカバーでも読みたくなるような本を書いてくれるのなら。ただ良い本を書いてくれるのならば、それでよいではないですか。そしてどうか出版社はそれを全力でバックアップしてください。

東野 圭吾
集英社
発売日:2011-09-09