2012年3月19日月曜日

きゃりーぱみゅぱみゅは魔法の天使クリィミーマミの夢を見るか

きゃりーぱみゅぱみゅの新曲「CANDY CANDY」のMVが発表されました。

前作「つけまつける」において歌われた「つけるタイプの魔法」から、一転して今度はきゃりーぱみゅぱみゅ自身が「80年代風魔女っ娘アイドル」に扮するMVです。

今回のMVも田向潤監督の作品だそうですが、今回は特に田向監督の作品性が強いのかもしれません。

「PONPONPON」におけるカワイイ物あふれる女の子の部屋、「つけまつける」の地底植物セットなどのアートディレクションを手がけてきたのは、アートディレクターの増田セバスチャン氏でした。

今回も増田セバスチャン氏はMV制作に関わっていますが、今回手がけたのは、きゃりーぱみゅぱみゅが寝転ぶ「ふわふわCANDYの楽屋」のみの模様。

実際のディレクションがどのように行われているかはわかりませんが、今回に関しては前作までのPVより田向監督の作品性が強く発揮されているのではないか、と僕は見ています。





そんな今回のMVですが「魔法の天使クリィミーマミ」を強く連想させます。

1983年7月1日から1984年6月29日にかけて放送されたスタジオぴえろ制作の魔法少女アニメ「魔法の天使クリィミーマミ」は、第二期魔法少女ブームにあたる作品です。

80年代の原宿トレンドであった「クレープ屋」を主人公の実家に設定したり、芸能界を舞台に「主人公が魔法でアイドル歌手に変身する」という設定で、当時のヒット音楽番組であった「ザ・トップテン」に出演するシーンや、80年代の空気感を積極的に取り入れた作品として知られています。

これは特に意図的ではない符合でしかないと思いますが、クリィミーマミ13話では「偽物のクリィミーマミ」が鏡から出てくる話もあります。MVに登場する偽物のきゃりーを連想しますね。

「クリィミーマミ」はファッションの分野であらためて注目が集まっているアニメでもあります。グロスのきいた口紅やアイシャドー、髪や洋服の色使いも可愛らしくて、なんだか妙につやっぽいんですね。

きゃりーぱみゅぱみゅがコラボしているブランド「galaxxxy」でも、「魔法の天使クリィミーマミ」のコラボ商品が以前から展開されていたり、昨年にはそのデザイン性に注目した「クリィミーマミ」展も開かれています。


さて、今なぜあえて「80年代の魔女っ娘アイドル」「クリィミーマミ」なのでしょうか。

きゃりーぱみゅぱみゅ本人がこのように語っています。

「今回意識したことは80年代アイドル風です!80年代アイドル!とにかく狙ってないピュアさとかがたまらなく好きで、わたし今すごくハマっているんです!」

きゃりーぱみゅぱみゅが生まれたのは1993年

マスメディアで「コギャル」という言葉が使われ始めまたのがちょうどそのころで、ギャルということばが『言動などに常識や秩序を感じられない女子高生や女子大生』というイメージとして植えつけられていったのがこのころです。

「女の子の流行」こそが消費を生むと信じた大人たちが、「やりすぎる」ようになっていったのがこの時期だといえると思います。

「文化」から発生した純粋な「流行」を待ってなどいられないと、「文化」をつくることを飛び越えて、無理やり女の子の「欲望」をこじ開けるようにして「消費の流行」を「造る」ことに腐心するようになってしまった――90年代以降の女の子の文化をめぐる趨勢を、僕はこのように捉えています。

しかし、そういうならば80年代こそ、消費文化が花開いた頃ではないか――という言葉がかえってくるに違いありません。

そのとおりです。ただ、80年代に花開いた消費文化そのものは、あくまで女の子の欲望を肯定するもので、コンプレックスを煽るような方たちで女の子の欲望をこじ開けるような真似はしていなかったのではないか、というのが僕の考えです。

80年代の魔法少女・クリィミーマミは、少女の欲望を肯定するうえで、非常に革新的なアニメです。欲望と言わず、夢といったほうがより良いかもしれません。

魔法使いサリー、アッコちゃんなど、70年代までの魔法少女たちは、世のため人のために魔法を使おうとしましたが、クリィミーマミは基本的に自分の欲望、自分の夢の実現のためにしか魔法を使いません。

女の子の夢が強く肯定されていたのです。



きゃりーぱみゅぱみゅが恋焦がれるのは、生まれるころに終わってしまっていた、このような「少女の夢をかなえる魔法」・「かわいい」純粋さなのではないでしょうか。

フォトグラファーの米原康正さんは「原宿よ、消費主義に食われるな!」と題されたインタビューで以下のように答えています。

「僕は90年代後半に生まれた『ギャル文化』をリアルタイムで追ってきました。もともとギャル文化は若い女の子たちが自分たちのために生み出した新しいカルチャーだったのに、オジサンたちの金儲けになる商品として消費され尽くしてしまった。女の子たちが自分たちの間で個性を競うことで生まれた文化が、メディアに取り上げられて一般化し、消費主義にからめとられて消えていった。」

そして、きゃりーぱみゅぱみゅはこのようにTwitterでつぶやいています。

原宿ガールとギャルは全く別ものよ http://t.co/072p72hV
pamyurin2012/02/28 00:03:17


しかし不思議なのは、こうした「かわいい」の立役者が、実は男性であることが多いことなんですよね。

中田ヤスタカ、増田セバスチャン、田向潤といったきゃりーぱみゅぱみゅのプロデュース陣もそうですし、「カワイイ」のルーツにある内藤ルネや高橋真琴もそうです。竹久夢二や中原淳一も忘れてはなりません。現代におけるそれら乙女マインドの正統な継承者といえば、もちろん嶽本野ばらも忘れてはいけませんね。そうそう、クリィミーマミの脚本・演出陣も男性です。

今回の「CANDY CANDY」のMVには、どうにも前2作のMVと違う印象を受けました。

増田セバスチャンのアートディレクションが中心でなかったということは大きいと思うのですが、なによりも、ターゲットが今まで以上に「男子」にも向けられていたような気がしたことです。

少女マンガやアイドル文化に傾倒する「サブカル男子」「原宿男子」。

少女マンガの典型パターンの象徴的イメージとして知られる「食パンをくわえて走る女の子」がこのMVの中で登場します。

しかしこの「食パン少女」が、実際にはいかなる少女マンガにも「存在しない」ということを知っているでしょうか? 「廃屋譚WEB」では、その詳しい検証が行われています。

少女マンガのサブカルチャーとしての検証や分析といえば、大塚英志や宮台真司といった文化系の評論家たちが積極的に行なってきたことです。

今回のMVはそういった文化評論を好むサブカル男子の視線を強く意識しているかのような印象を受けます。「語られたがっている」というような。

増田セバスチャン氏はTwitterでこのようにつぶやいています。

「原宿」や「Kawaii」。今、キチンと理論付けしとかないと簡単にさらわれてく。歴史なんて所詮その繰り返しかもしれないが、やなことは繰り返したくない。
sebastea2012/03/16 09:43:33

歴史は繰り返すといいます。

しかし、現代の最新の魔法少女、まどか☆マギカは、過去へ戻る繰り返しの果てに「奇跡」を起こします。奇跡も、魔法もあるんだよ。

「希望を抱くのが間違いだなんて言われたら、私、そんなのは違うって。何度でもそう言い返せます。きっといつまでも言い張れます。(魔法少女まどか☆マギカ12話 - 鹿目まどか)」

つけるタイプの魔法少女・きゃりーぱみゅぱみゅが80年代に戻ることで、2012年の原宿ガールズ・原宿ボーイズたちが面白い未来を描ける希望を抱きたいですね。

きゃりーや中田ヤスタカの所属事務所「アソビシステム」の企業理念は『ブームを作ることよりも、カルチャーを創る。今の時代に発信すべき「アソビ」をもっと。』だそうです。

ちなみに。

今回の楽曲「CANDY CANDY」のメインフレーズに「CANDY」という言葉が使われたのは、

「キャンディ」という言葉が、80年代の「カワイイ」の呪文だったから。

それについても以下の記事で考察していますので、もしよろしければお読みください。

きゃりーぱみゅぱみゅ「CANDY CANDY」から日本の「カワイイ」のルーツを想う
http://masafiro1986.blogspot.jp/2012/03/candy-candy.html


ワーナーミュージック・ジャパン
発売日:2012-04-04


竹村 真奈
ビー・エヌ・エヌ新社
発売日:2009-07-15



(参考リンク)
遅刻する食パン少女まとめ
原宿よ、消費主義に食われるな! | nippon.com