2012年9月21日金曜日

こども、おとな、きゃりーぱみゅぱみゅ

きゃりーぱみゅぱみゅの新曲「ファッションモンスター」のMVが公開されました。


きゃりーぱみゅぱみゅって本当に現代アートのようですね。文脈とか表現とか。みていても考えていても、すごく面白いです。そう、改めて思いました。

今回も、アートを鑑賞するときのように、きゃりーぱみゅぱみゅの表現を解釈してゆきたいと思います。お付き合いいただければ幸いです。

きゃりーぱみゅぱみゅは日本的な「カワイイ」を全面に押し出した「PONPONPON」でデビューし、またたく間に、世界で知られる「ハラジュク」のアイコンとしてブレイクしました。村上隆を思わせるアイボール的な表現など、グロテスクな「カワイイ」をふんだんに散りばめたMVはアート性も非常に高く、きゃりーぱみゅぱみゅの名前を世界に広めることとなりました。

続く「つけまつける」では「つけるタイプの魔法」を歌い、おしゃれと「変身」の関係を表現しました。仮面ライダーや魔法少女などといった、日本の想像力を存分に匂わせる作品です。日本でもきゃりーぱみゅぱみゅが世界的に人気を博していることが知られてゆき、「独特な世界観で支持される女の子が出てきた」ということが伝わってゆきました。

「CANDY CANDY」では魔法少女のニュアンスを引き継ぎながら、日本の「カワイイ」のルーツである60年代、70年代からの「カワイイ」の表現に踏み込んでゆきました。日本にいれば当たり前でも、日本以外では新鮮である、日本の「カワイイ」。昭和の時代に欧米へのあこがれが引き起こした、内藤ルネ的な少女観を「きゃりーぱみゅぱみゅ」で復刻させる試みでした。

これまでを簡単にみていくと、これまできゃりーぱみゅぱみゅは「カワイイ」を軸として、「日本的なもの」の表現を世界に対して行い、逆に「世界から見た日本」の表現を日本へ逆輸入するといったような試みを行なっていたのだと言えると思います。

日本、世界、ファッション、原宿、カワイイ、少女、変身、魔法・・・――といったようなキーワードで象徴されるようなものをテーマにしていたのでした。

これまでのきゃりーぱみゅぱみゅは。

さて、今回は。

「ファッションモンスター」ですが、これまでのきゃりーぱみゅぱみゅでありながらも、これまでのきゃりーぱみゅぱみゅとは違う軸を持った表現に踏み出したといえるのではないかと思います。

そう、今回、「ファッションモンスター」は原宿やカワイイの歌ではないんです

今までのきゃりーぱみゅぱみゅのテーマを飾りにして、代わりに別のテーマを軸に据えています。

今回は、「誰かのルール」に対して反発し、「自由でいたい」という強い意志が歌詞のメッセージになっています。

これこそまさにロックだと言える曲ですね。

ワーナーミュージック・ジャパン
発売日:2012-10-17

歌詞を読んでいくと、

「面白いって言いたいのに言えないなんてつまらないでしょ」
「誰かのルールにしばられたくはないの」
「この狭い心の檻を壊して自由になりたいの」

「不自由な状態」に対する抑圧感が強く描かれ、自由を求める姿が歌われています。

では、きゃりーぱみゅぱみゅにおける「自由」っていったいどんなイメージのものなのか。

僕は「こども」なのではないか、と考えています。

実は「こども」というモチーフは、今までのきゃりーぱみゅぱみゅにも採用されてきたものです。

「きゃりーのマーチ」や「ぱみゅぱみゅレボリューション」は遊園地やテーマパークを連想させる楽曲です。「チェリーボンボン」でも「こどものころ」が歌われています。アルバムの価格を「こどもたちの味方プライス」と表現したり、きゃりーがこども好きであることはこれまでにも知られています。また、アルバム収録曲の「みんなのうた」や「おやすみ」などでも、「こども」的モチーフが用いられています。

そうした目線でこのMVを見ていくと、今回用いられているホラーモチーフはどれも、こどものころ、怖い「絵本」に出てきたようなモチーフです。大人が怖がるような「心霊現象」ではなく、こどものころ僕たちがこわかった「おばけ」や「ようかい」のような表現です。


この曲は僕たちにそんな「こどものころ」を思い出させるような曲だと僕は思いました。

「思い出は億千万」のような切なさも感じます。なんとなく曲のタイトルバックもウルトラマンみたいだし。

今の自分は、おとなになって、なんか忘れてないか? しばられてないか?

もちろん、これはハロウィンの曲でもありますね。ハロウィンというのは、大人になっちゃったひとでも、普段できないような格好を自由にできる日ですからね。

ここまで考えて、今回のタイアップに「g.u.」が起用された理由が分かったような気がします。

普段は、流行にあわせて、社会にあわせて、洋服を着ていてもいい。

でもたまには、自由な自分に想いを馳せたり、童心を懐かしむこともありますよね。

「こども」には戻れないけど、でも、だから、ハロウィンの夜だけはちょっと楽しんじゃいましょう。

「ファッションモンスター」はそういうオトナのモンスターたちに向けた曲なんだと、僕は捉えました。

最初、「g.u.」のムービーが発表されたときは、正直微妙な気持ちでした。しかし、こうやってMVをみてみると、やはり、きゃりーぱみゅぱみゅ、面白いです。

「こども」って、こうして捉えてみると「カッコイイ」なとおもいます。今回のきゃりーぱみゅぱみゅは「カワイイ」よりも「カッコイイ」が僕としては近いような気もします。